投資家みたいに生きろ/藤野英人

Book

本書では、投資家という「職業」になろうという意図ではなく、未来に向けて「見える資産」「見えない資産」を貯めていき、市場価値を高めるという広義の意味での「投資」を勧める。「老後2000年問題」や「人生100年時代」などが時代のキーワードとなっているが、その解決策として、著者の投資家ならではの視点を読者に授ける。タイトルの「投資家みたいに生きる」とは、サラリーマン気質から抜け出し、投資家が当たり前に考えている「思考」を手に入れ、日々の「習慣」を変えること。

「リスクと向き合う」ということ

 「リスクをとる」という考え方は、まさに「投資」の考え方です。

 投資の世界におけるリスクとは、「得られるリターンの不確実性の度合い(振れ幅)」のことを指します。

 リスクをとらないとリターンが得られない。すなわち、大きなリターンを得たいのであれば、不確実性(リスク)を受け入れなくてはいけません。

 多くの日本人は、変化や変動を嫌います。できるだけリスクをとることを避けて、現状維持を好みます。だから、何かに挑戦することができずにいるのです。

 「日本人とリスク」の問題を考えるとき、私はよく日本史にヒントがあるという話をします。誰もが学校で学んだことですが、奈良・平安時代に日本は遣唐史を中国に派遣しました。

 当時の船は20メートル程度の大きさで、航海の技術は未熟なものだったそうです。なんと、中国へ渡る船の半分は沈没してしまいました。50%の確率でしか中国に渡れなかったのです。

 それでも、1隻の船には100人ほどの遣唐史が乗りました。彼らは、当時の高官や留学生で、いわば「超エリート」の人たちです。

 遣唐史のときは4隻の船を出しました。なぜなら、行きの船で2隻が沈み、帰りの船では1隻が沈む計算になるからです。

 300人ものエリートや財産を海の底に沈めてでも、中国の政治体制や文字、文化、宗教を取り入れようとしたのです。かつての日本人はこうした「リスクテイク」をして、貪欲に外の世界から学びました。日本人は決してリスクをとれない民族ではありません。

子供の頃、やりたいことがあればリスクや危険性などは考えずに行動していた。

しかし、大人になるにつれて行動力よりもリスクや危険性のことばかり考えてしまって、新しいことへの挑戦がなかなかできなくなった。

そもそも日本の教育では「安全・安心・安定」が、素晴らしいと義務教育の頃から大学卒業まで教え続けられてきた。

つまり、生まれてから大人になるまでの20年の教育で多くの日本人は「道徳の勉強」しか教えてもらえず、「お金」については、ほとんど学ぶことがないまま社会人になってしまう。

このような状態で社会にでてしまった私たちに「リスク」がとれるはずがない。

しかし、著者が言っているように「リスクをとらないとリターンが得られない」というのは正しい。

リスクなしでいきなり社長になった人はいないし、リスクが全くない投資なども存在しない。

しかし、ありがたいことに私たちが生きてるこの時代は、技術の進歩と情報が取得しやすい素晴らしい環境にある。

平安時代と違って、死ぬかもしれない覚悟で船や飛行機に乗らなくてもいいのだ。

つまり、昔と違って少ないリスクでリターンがとれる時代になったと解釈できる。

思考が変わると「今」が変わる

 同じ時間を与えられても、本を読んで新しいことを学ぶ人もいれば、なんとなくテレビをつけてぼーっと過ごす人もいます。スマホゲームに夢中であっというまに数時間を潰してしまう人だっています。

 「時間」という見えない資産を、未来からリターンを得られるよう使う。そういう発想ができるかどうか。投資家みたいに考えることができれば、「今の行動」そのものが変わるのです。

 たとえ、テレビを見るのであっても、「ニュースを見て、自分なりの意見を持ってみよう」「経営者のドキュメント番組を見て、経営哲学を学ぼう」と、主体的に時間を使うことができます。

 これらの行動はいずれも、エネルギーを投入しています。そのお返しとして、「知らなかった知識」や「新しい視野」などのリターンを受けることができます。お金と一緒で、時間もなんとなく使うと、なんとなく無くなっていくものなのです。

20代にして資産100億円以上を作り上げたある投資家がいる。

その方はこのように言っている。

「今、何気なく過ごしているこの時間をほとんどの人は何も考えずに過ごしている。1秒を大切にしなさすぎている。みんな1秒経過するごとに死に近づいていると、気付いていない。その1秒を考えて生きていけるか、いけないかで金持ちと貧乏に差がでることを知っている人はほとんどいない」と。

恥ずかしいことに、この投資家の話を聞くまで私は「1秒を大切にしないタイプ」の人間だった。

日々の行動になんの生産性もなく、ただ時間を消費しているだけ。

かなり勿体無いことをしていたのだと気づいた。

何時間もYouTubeやSNSを見る暇があるのなら、その時間を学ぶ時間に変えて、その学びで得た知識をお金に変えればいい。

そうすれば暮らしに余裕が生まれる。とにかく日々の何気ない行動に「投資家のような思考」をもたせることが大切。

決断(成功体験の積み重ね)

 投資において、決断する力は不可欠です。たとえば、日本株に投資する投資家の場合、約3600社の上場企業の中からどの会社のどの株をどういう比率で持つかを決めます。10社を選んだとすると、残りの3590社は捨てることになります。

 無限の可能性の中から1つの選択肢に絞り、残りの可能性を捨てる。これが決断するということです。

 「自分には決断力がない」という人もいるでしょう。

 そんな人は、大事なことも他人に決めてもらっているのかもしれません。つまり、決断しない決断をして責任やリスクを回避しているのです。

 リスクが怖いから投資しないという決断は、リターンを得る機会を捨てることと同じです。新しいものにチャレンジしないという決断は、成長を諦めることと同じです。「何を捨てるのか」「何を手放すことになるのか」をセットで考える必要があります。

 捨てられない人は、決断できない人です。投資家は、「あの会社も、この会社もいい」と迷っているうちは、投資することができません。

 自分の時間やお金を投じるときも、あれこれやりたくて迷っているうちは、何もしていない状態です。使い道を先送りするのは、お金をタンス預金にして死んだ状態にしているのと同じです。まずは、時間やお金を「何に使わないか」、つまり、「何を捨てるか」を考えるのが近道でしょう。

友達と外食をする時「何が食べたい?」と、聞かれ「○○さんに任せるよ!」と、回答する人はまさに「決断しない決断をして責任やリスクを回避する人」になります。

自分の食べたいものを答えて「否定されたらどうしよう」「食べた後に美味しくなかったらどうしよう」と、常にリスクのことばかり考えてしまう。

結果、相手に決めてもらい自分には、責任がこないようにする。

投資家が毎日のようにしている大きな決断を私たちができるかといえば、正直難しいと思います。

しかし、少なくとも日々の暮らしの中で起こる、小さな問題に関しては相手に頼るのではなく、自分で決断していくことで、投資家のようにリクスからリターンを得られることにつながるのです。

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